海難事例からの教訓

海难事故案例的教训 (中日对照)

【事例1】見張り不十分による衝突事故

【案例1】因瞭望不充分导致的碰撞事故

事故の概要

旅客船Aは、甲港から乙島に向けて航行中、船長は魚群探知機に映る魚の反応に気をとられていた。一方、漁船Bは、同水域で網を曳いて漁労に従事しており、乗組員は漁労作業に集中し、周囲の見張りがおろそかになっていた。その結果、互いに相手船の存在に気づかないまま接近し、衝突した。

事故概要

旅客船A号正从甲港驶往乙岛。船长为了寻找鱼群,正专注地看着船上的探鱼器屏幕。与此同时,渔船B号正在同一水域进行拖网作业,船员们也正专注于渔捞工作,未能充分观察周围情况。最终,未能注意到对方的A号船与B号船发生了碰撞。

教訓:見張りの徹底

どのような理由があろうとも、航行中の見張りは船長の最も基本的かつ重要な義務である。本件では、Aの船長は魚群探知機に、Bの乗組員は漁労作業に、それぞれ注意がそれて見張りが不十分となり、回避できたはずの衝突に至った。
ポイント:いかなる場合でも、計器や作業に集中して目視による見張りを怠ってはならない。視覚、聴覚及びその時の状況に適したすべての有効な手段により、常に周囲の状況を警戒しなければならない。


教训:彻底的瞭望

无论出于何种理由,航行中的瞭望都是船长最基本也是最重要的义务。此案例中,A号船长因被探鱼器分心,B号船员因专注于作业,双方都疏忽了瞭望。这导致了本可避免的碰撞事故。
关键点:任何时候都不能将注意力完全集中在仪表或作业上而忽略了目视瞭望。必须通过视觉、听觉以及一切可用手段,时刻对周围环境保持警惕。

【事例2】船位不確認による夜間の乗り揚げ事故

【案例2】因未确认船位导致的夜间搁浅事故

事故の概要

プレジャーボートCは、夜間に母港に帰港中であった。船長は、長年通い慣れた海域であることから、自らの経験を過信し、GPSや灯浮標などによる正確な船位の確認をせず、感覚と記憶だけで操船していた。その結果、港口進入時に防波堤の位置を誤認し、防波堤に乗り揚げた。

事故概要

休闲娱乐船C号在夜间返回港口。船长对自己常年航行的这片水域非常熟悉,因此过度自信,没有使用GPS或参考航标灯来精确确认船只位置,仅凭感觉和记忆操纵船舶。结果,在进入港口时误判了防波堤的位置,导致船只撞上防波堤并搁浅。

教訓:過信をせず船位確認の励行

「慣れ」は、時に安全の落とし穴となる。特に夜間や視界不良時は、距離感や方位感が狂いやすい。本件の直接の原因は、船長が自らの経験を過信し、客観的な手段で船位を確認するという基本操作を怠ったことにある。
ポイント:どれほど慣れた航路であっても、常に船位を確認する習慣をつけなければならない。夜間は、GPS、レーダー、灯浮標、陸上の灯りなど、複数の情報を活用して総合的に判断すべきである。


教训:杜绝过度自信,严格确认船位

“熟悉”有时会成为安全的陷阱。尤其是在夜间或能见度不良的情况下,距离感和方位感很容易产生偏差。此案例的直接原因是船长过度相信自己的经验,而忽略了使用客观手段确认船位的基本操作。
关键点:无论航线多么熟悉,都必须养成随时确认船位的习惯。在夜间,应积极利用GPS、雷达、灯浮标、陆上灯光等多种信息来综合判断。

【事例3】不適切な操船による転覆事故

【案例3】因操船不当导致的倾覆事故

事故の概要

小型船舶Dは、航行中に真横から波(横波)を受けていた。針路を変えるため、船長は十分に減速しないまま、急な転舵を行った。転舵中に船体が大きく傾斜したところへ、さらに側面から大波を受け、船は一瞬で復原性を失い転覆した。

事故概要

小型船D号在航行中遭遇了从侧面打来的横浪。为了改变航向,船长在没有充分减速的情况下,进行了一次急转弯。在转弯过程中,船体发生大幅度倾斜,此时一波大浪从侧面袭来,导致船只瞬间失去平衡而倾覆。

教訓:的確な操船技術

波のある海域では、いかなる操船も慎重に行わなければならない。高速での急転舵は、船体を外方に傾け、復原性を著しく低下させる。この状態で横波を受ければ、転覆の危険は極めて高くなる。
ポイント:波浪中での変針は、まず安全な速力まで減速し、大きな半径で緩やかに転舵することが基本である。常に船体姿勢と波の関係に注意し、船の腹を波にさらさないように操船しなければならない。


教训:正确的操船技术

在有波浪的海况下,任何操船动作都必须谨慎。高速急转弯会使船体外倾,大大降低复原性。此时若遭遇横浪,倾覆的风险极高。
关键点:在波浪中需要转向时,应首先降至安全速度,然后以较大的半径进行平缓的转向。必须时刻注意船体姿态与波浪的关系,避免将船腹暴露在浪前。

【事例4】発航前点検不十分による機関故障

【案例4】因出航前检查不充分导致的发动机故障

事故の概要

モーターボートEの船長は、最近の調子が良かったことから、発航前の点検を簡単に済ませ、燃料フィルターやバッテリーの状態を確認しなかった。沖合数マイルまで航行したところで、燃料フィルターの詰まりが原因でエンジンが突然停止した。再始動もできず、海上を漂流し、救助を要請することとなった。

事故概要

摩托艇E号的船长在出航前,认为船只最近一直状态良好,便草草结束了出航前检查,未对燃料滤清器和电池状态进行确认。在航行至离岸数海里处时,发动机因燃料滤清器堵塞而突然熄火。由于无法再启动,船只在海上漂流,最终不得不请求救援。

教訓:発航前点検の励行

洋上での事故の多くは、陸上では簡単に解決できたはずの小さな問題に起因する。発航前点検は、洋上でのトラブルを防ぐ最後の砦である。本件の故障は、丁寧な点検によって十分に防ぐことができた。
ポイント:毎回の発航前に、チェックリストに基づき、船体、機関、燃料、バッテリー、冷却系統、非常備品などを厳しく点検しなければならない。「前回大丈夫だったから」や「時間がないから」といった理由で、いかなる手順も省略してはならない。


教训:严格执行出航前检查

许多海上事故都源于本可在岸上轻易解决的小问题。出航前检查是防止海上故障的最后一道防线。此案例中的故障是完全可以通过细致检查来预防的。
关键点:每次出航前,都必须严格按照清单对船体、发动机、燃料、电池、冷却系统、应急设备等进行检查。绝不能因为“上次没问题”或“赶时间”而省略任何一个步骤。

【事例5】動静監視不十分による衝突事故

【案例5】因动静监视不足导致的碰撞事故

事故の概要

F船は航行中、早くから左前方にG船の姿を認めていた。F船の船長は、G船がそのままの針路、速力で航過するものと思い込み、その後、継続的な監視を行わなかった。しかし、G船は他の障害物を避けるために急に針路を変更し、F船の船長がそれに気づいたときには手遅れで、両船は切迫した状況となり、衝突に至った。

事故概要

F号船在航行中,很早就发现了左前方的G号船。F号船长认为G号船会保持现有航向和速度通过,便不再对其进行持续的观察。然而,G号船为避让其他障碍物突然转向,F号船长发现时为时已晚,两船陷入了紧迫局面,最终导致碰撞。

教訓:他船の動静を継続して監視する

見張りとは、単に他船を「見る」ことではなく、その「動静を継続して監視」し、衝突のおそれがあるかどうかを判断することである。本件で、F船の船長は「だろう」という思い込みから、相手船の動静を継続的、かつ系統的に監視、評価することを怠った。
ポイント:視認したすべての船舶に対し、コンパス方位の変化やレーダー等を用いて衝突のおそれがあるかを判断する。危険がないと判断した場合でも、最終的に安全に航過するまで、その動静の監視を続けなければならない。


教训:持续监视他船动态

瞭望不仅仅是“看到”其他船只,更重要的是要“持续监视”其动态,并判断是否存在碰撞危险。此案例中,F号船长犯了“想当然”的错误,没有对他船的动向进行持续的、系统的观察和评估。
关键点:对发现的每一艘船,都应利用罗经方位、雷达等手段,判断其是否存在碰撞危险。即便初步判断没有危险,也应保持对其动态的监视,直到最终各自安全通过。

【事例6】過積載及び気象情報無視による沈没事故

【案例6】因超载及忽视天气预报导致的沉没事故

事故の概要

小型漁船Hは、定員を大幅に超える釣り客と、大量の釣具やクーラーボックス等を搭載し、乾舷が著しく低下した状態で、船長は波浪注意報が出ていることを知りながら、大したことはないだろうと判断し、出航を強行した。洋上で予報通りの風浪に遭遇し、過積載と乾舷の低下が原因で、次々と波が船内に打ち込み、排水が追いつかず、浮力を失い沈没した。

事故概要

小型渔船H号搭载了远超额定载客量的钓鱼客及大量渔具、冰箱等物品,导致干舷高度显著降低。船长明知天气预报有风浪警报,但认为问题不大,依然强行出航。在海上遭遇预报中的风浪后,船只因超载和干舷过低,不断有浪涌入船内,最终排水不及,失去浮力而沉没。

教訓:船長として的確な判断力を持つ

船長の判断は、乗船者全員の安全に直結する。本件は、船長の誤った判断がいくつも重なった結果の悲劇である。一つは、船舶の積載能力を無視した無謀な過積載であり、もう一つは、気象情報を軽視し、船と乗船者を危険にさらしたことである。
ポイント:船舶の定員、積載量は厳守しなければならない。出航前には必ず気象・海象情報を入念に確認し、状況が悪化した場合には、直ちに航行を中止し、引き返す勇気と決断力を持たなければならない。決して「だろう」という希望的観測で判断してはならない。


教训:船长必须有正确的判断力

船长的判断直接关系到全船人员的安危。此案例是船长一系列错误判断叠加导致的悲剧:一是无视船舶的装载极限,严重超载;二是轻视天气预报,将船只和人员置于危险之中。
关键点:必须严格遵守船舶的额定载客量和载重量。出航前必须仔细确认天气和海况预报,并在情况恶化时,有立即中止航行或返航的决断力。绝不能抱有侥幸心理。